飛来した銃弾を砕くガラス。ルパードの滴【ぱりとん君の豆知識】

 

ぱりとん君の豆知識

飛来した銃弾を砕くガラス

パーチェス先生
まずはこちらを見てください。

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出典:laughingsquid.com

弾丸をも砕くルパードの滴、オランダの涙とは?

ぱりとん君
え!?銃弾が砕けてるよ!

パーチェス先生
そうです。このオタマジャクシの様な形ガラスが、前回博士が強化ガラスとの違いで言っていた「ルパードの滴」又は「オランダの涙」です。

ぱりとん君
なんでこんな事ができるんですが?
防弾ガラスだって銃弾を砕くなんて聞いたこと無いですよ?

パーチェス先生
防弾ガラスはガラスと他の素材を貼り合わせることで衝撃を拡散していますが、このルパードの滴の仕組みは全く違うんですよ。

ぱりとん君
どう違うんですか?

パーチェス先生
ではまずは名前の由来から。
1661年にカンバーランド公ルパートが立ち会い行われた実験の為、Prince Rupert’s Drop「ルパードの滴」と名前が付きました。
また、この実験でかは定かではありませんが、オランダ製のガラスを使って涙の様な形になったから「オランダの涙」とも言われています。

 

製法はいたってカンタン

ぱりとん君
これだけ丈夫なガラスですもんね。
やっぱり作り方も相当特殊なんですか?

パーチェス先生
いえいえ。作り方は、溶融させたガラスを冷水に落とした物ですので。

ぱりとん君
え?だけ?

パーチェス先生
だけです。
強化ガラスがなぜ強いかは博士に習いましたよね?

ぱりとん君
はい。
そもそもガラスは引っ張りに弱いので、予め圧縮応力をかけているって習いました。

パーチェス先生
そうですね。ガラスを高温から急激に冷やすことで、膨張したガラスが縮もうとする。
その際の圧縮応力を利用するものでしたね。
その強化版だと思ってください。

ぱりとん君
強化版と言うと?

パーチェス先生
ええ。縮もうとする力を強くするにはどうすればよいですか?

ぱりとん君
いっぱい温めて、急激に冷やす?

パーチェス先生
いいですね。強化ガラスは変形しない程度でしたが、こちらはドロドロに溶けるくらいの温度です。
当然膨張する量も増え、その分冷やした際の縮もうとする力が強くなります。

パーチェス先生
さらに膨張係数の高ガラスを用いて、急速に冷やすと・・・

ぱりとん君
温めた際の膨張が大きくなるから、自然と元に戻る力も強くなる!

パーチェス先生
そうですね。その結果、強化ガラスの仕組みと同じように、外側に圧縮応力層ができます。

 

マッハ5.5で砕け散る姿は圧巻

ぱりとん君
じゃあこれも圧縮応力層と引張応力層のバランスを崩れるくらいの傷が入れば・・・

パーチェス先生
もちろん粉々です。
こんな感じに。

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出典:thisiscolossal.com

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出典:www.bestchinanews.com

ぱりとん君
うわっ・・・
ちょっときれいかも。

パーチェス先生
そうですね。
この映像はハイスピードカメラで撮っていますが、亀裂の入るスピードマッハ5.5ですので、肉眼だとまず見えないですね。

ぱりとん君
え?マッハ5.5って・・・
マッハって音速でしょ?

パーチェス先生
ええ。
空気中で340m/秒のスピードですね。

ぱりとん君
その5.5倍って・・・1秒で1.8km進む速さ?

パーチェス先生
そう言う事になりますね。発射された銃弾を砕く、ハンマーの打撃にも耐えるほどの強度をもつという事は、非常に強い力で圧縮、それに対応する引張の力が内部に溜まっているわけです。
このエネルギーが一気に開放された結果ですね。

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出典:i.imgur.co
ぱりとん君
ガラス全体がこの強度を持てるように応用できたら最高の防犯ガラスですね。