基礎知識
第三章 結晶化ガラスと強化ガラスの違いって?
そもそも強化ガラスって?
ぱりとん君
強化ガラスってよく聞くけどフツーのガラスと何が違うの?
まあ「強化」って言うくらいだから、丈夫なんだろうけど。
まあ「強化」って言うくらいだから、丈夫なんだろうけど。
博士
衝撃や荷重に対して一般的な硝子、つまりフロートガラスの3~5倍の強度を持つと言われておるな。
ぱりとん君
そんなに違うんだ!見た目は何か違うの?
博士
見た目は全く同じなんじゃ。
一般的な強化ガラスは、普通のガラスに熱処理を加え、急激に冷やしたガラスだからのぉ。
一般的な強化ガラスは、普通のガラスに熱処理を加え、急激に冷やしたガラスだからのぉ。
ぱりとん君
え?それだけ・・・?
博士
そうなんじゃ。「風冷強化法」もしくは「焼き入れ」と言ってな。
ただこれが「圧縮に強く、引っ張りに弱い」ガラスの特徴をうまく利用し、優れた素材へと生まれ変わるのじゃ。
ただこれが「圧縮に強く、引っ張りに弱い」ガラスの特徴をうまく利用し、優れた素材へと生まれ変わるのじゃ。
ぱりとん君
ぐ、具体的にお願いできますか?
博士
まず通常のガラスを変形しない程度の650~700℃迄加熱する。
その後にガラス表面に空気を吹き付けることにより急激に冷却するのじゃ。
その後にガラス表面に空気を吹き付けることにより急激に冷却するのじゃ。
ぱりとん君
なんでそんな事するの?
博士
熱い物を冷まそうとすると、どこから冷えると思うかの?
ぱりとん君
そりゃ、表面に冷たい風が当たるから表面からでしょ。
博士
そうじゃ。そして物体は温めれば膨張し、冷ませばその分収縮しする。
だが、当然ガラス内部の方が温度低下の速度は表面に比べると遅い。
だが、当然ガラス内部の方が温度低下の速度は表面に比べると遅い。
ぱりとん君
じゃあ収縮するタイミングも遅くなるよね。
博士
そう。その結果、早く冷えた(収縮した)表面には外から中に向かっての「圧縮応力の層」、反対に内部には「引っ張り応力の層」ができるんじゃ。
ぱりとん君
強化ガラスの仕組みはわかったけど・・・なんでこれがフツーのガラスの3~5倍も強くなるの?
博士
さっきも言ったようにガラスは引っ張りに弱いんじゃ。
ぱりとん君
引っ張りってなにさ?ガラスを引っ張ったら壊れるって事?
博士
例えばじゃ。
ガラスにボールがぶつかって割れることがあるじゃろ?
ガラスにボールがぶつかって割れることがあるじゃろ?
ぱりとん君
ええ。昔学校の教室でサッカーやってて一度割りましたね。
博士
・・・外でやりなさいよ。
博士
では、その時なぜ割れたかわかるかのぉ?
ぱりとん君
え?ボールがぶつかった衝撃でしょ?
博士
もう少し具体的に言うと、ぶつかった瞬間に板がたわみ、反対側の面に引っ張りの力が働くのじゃ。そしてその応力(引っ張り力)に耐えられなくなり破損してしまうんじゃ。
ぱりとん君
?
ぶつかった反対側が引っ張られるって?
ぶつかった反対側が引っ張られるって?
博士
図で説明するとこんな感じじゃ。
ぱりとん君
あっ。なるほどね。曲げていくと割れる下敷と同じ考えだね。
博士
そうじゃ。この引っ張り力に対抗するために予め圧縮力をかけておく。そうすることで力の相殺を行っているのじゃ。
ぱりとん君
だから普通のガラスより強いんだね。
丈夫だけど防犯には不向き?
博士
割れ方も大きく異なるんじゃ。
ぱりとん君
割れ方?ガラスが割れる時って尖ってて触るとケガするような割れ方でしょ?
博士
それが通常の割れ方なんじゃが、強化ガラスは全体が細かい粒状に破砕されるんじゃ。
出典:板硝子協会「強化ガラス・倍強度ガラス使用手引書」のスクリーンショット
ぱりとん君
これなら触ってもケガしなくて安全だね。
だから学校とか車にも使われるんだね。
だから学校とか車にも使われるんだね。
ぱりとん君
でもさ、全部このガラスにすればいいのに。丈夫で安全じゃん。
博士
ただ強化ガラスは傷の大きさに関わらず、小さなヒビでも粉々になってしまう事もあるんじゃ。
ぱりとん君
へ?なんで?
博士
さっき引っ張りと圧縮の力が加わっていると教えたじゃろ?
この応力バランスが取れているから非常に強いガラスになるんじゃが、傷が応力層を超えた時にそのバランスが崩れてしまい、「ボン!」と音を立てて割れてしまうんじゃ。
この応力バランスが取れているから非常に強いガラスになるんじゃが、傷が応力層を超えた時にそのバランスが崩れてしまい、「ボン!」と音を立てて割れてしまうんじゃ。
ぱりとん君
そしたら、強化ガラスって加工ができないの?
博士
この方法で製造された強化ガラスはできないので、強化加工するのは一番最後じゃな。先に穴あけ、切断をしておけば問題ないんじゃ。
ぱりとん君
防犯目的のガラスではないって事ね。
博士
そうゆう事じゃ。ほかにも製法によってはハンマーで叩いても壊れず、拳銃の弾丸を砕くほどの強度を持つガラスもあるのじゃ!
ぱりとん君
え?何ですかその映画とかゲームの中で出てきそうなアイテムは?
博士
17世紀にはその存在が知られていた「ルパートの滴」又は「オランダの涙」と言うものがあってな。。。
ぱりとん君
ますますゲームの中に出てきそうな設定と名前。。。
博士
こっちの分野はパーチェス先生が詳しいから今度教えてもらいなさい。
ぱりとん君
はーい。
弾丸を防ぐのでなく、砕く!ルパードの滴【ぱりとん君の豆知識】
強化ガラスの自爆現象
ぱりとん君
・・・随分物騒なタイトルですね。なんですが自爆って?
博士
強化ガラスは応力層を超える傷が発生すると割れると教えたじゃろ?
ぱりとん君
ええ。「ボン!」と音を立てて割れるっておっしゃってましたね。
博士
ガラスの製造過程でどうしても不純物が入ってしまう事があってな。この自爆現象は硫化ニッケルが原因なんじゃ。
こやつが膨張することで、応力層を超えて傷をつけてしまい、何かにぶつけたとかしなくても自然に割れてしまう事を「自爆現象」と言っておるのじゃ
こやつが膨張することで、応力層を超えて傷をつけてしまい、何かにぶつけたとかしなくても自然に割れてしまう事を「自爆現象」と言っておるのじゃ
ぱりとん君
何もしてないのに割れるって怖いですよ?
ボクの家のガラステーブルも強化ガラスですけど、その不純物が大きくなったら突然割れちゃうの?
ボクの家のガラステーブルも強化ガラスですけど、その不純物が大きくなったら突然割れちゃうの?
博士
もちろんどのメーカーもそんな危険な状態で出荷するのではなく、ヒートソーク処理を行うのじゃ。
ぱりとん君
ヒートソーク処理って?
博士
完成した強化ガラスを加熱することで、不純物である硫化ニッケルを意図的に膨張させ、強制的に破損させる。
そうすることで、世の中に極力出回らない様にしているんじゃ。
そうすることで、世の中に極力出回らない様にしているんじゃ。
ぱりとん君
ふるいにかけてるって事?
博士
そうじゃな。そしてヒートソーク処理後の破損する確率は数万枚に1枚と言われておる。
ぱりとん君
じゃあ安心だね。
博士
もちろん100%防げるものではないので、注意書きされている事が多いのぉ。
ぱりとん君
あ、ボクの家のガラステーブルにも「ごく稀に、ガラス中に残存する不純物に起因するキズによって発生する不意の破損があります。」って書いてあった。
博士
「絶対」と言う事は無いので、万が一に備えて記載しておるんじゃ。
参考資料:板硝子協会 「強化ガラス・倍強度ガラス 使用手引書」
■まとめ■
- 風冷強化法又は焼き入れによる、強化ガラスの製造方法
- ガラスを加熱し膨張させる
- 表面に空気を当てて急激な冷却を行う
- そうすると膨張が戻ろうとする(内部に向かって収縮)
- ただ冷えるのは外部からなので、内部は収縮ができないまま固まる
- 外部には圧縮応力層、内部には引っ張り応力層ができる
- 強化ガラスが強い理由
- ガラスは圧縮に強く、引っ張りに弱い
- よって外力により「たわみ」が起きた際に引っ張り力により破損してしまう
- そこで圧縮応力層を人為的に作り出すことで、引っ張り力を相殺する
- 強化ガラスの自爆現象
- 製造過程で入ってしまう不純物(硫化ニッケル)の膨張により、圧縮応力層と引張応力層の間に傷ができると応力のバランスが崩れ突然割れてしまう
- 防ぐためにヒートソーク処理を行い、割れてしまうものは強制的に割ってしまう
- ヒートソーク処理後の自爆現象は数万枚に1枚程度
黒子
終わっちゃいましたけど、タイトルが「結晶化ガラスと強化ガラス違い」ですよね?
パーチェス先生
まあ、別物って事ですね。今度私の授業でちゃんと説明しますから。