シール材「シリコン」と「シリコーン」は別物【基礎知識】

基礎知識

第四章 「シリコン」と「シリコーン」と「コーキング」の関係は!?

ぱりとん君
ねぇ博士?、お客様と話していると、「シーリング」と「コーキング」って二つの名前が出てくるんだけど、何が違うの?

博士
結論から言えばほとんど同じじゃな。今日はそのあたりを説明しよう。

 

1.コーキング?シーリング?何が違う?

博士
まずは言葉の意味を理解してみよう。
シーリング(Sealing)= 密閉する、蓋をする
コーキング(Caulking)= 詰め物をする、穴をふさぐ

ぱりとん君
ほぼ同じですね。

博士
厳密に言えば異なる事だが、「隙間を塞ぐ」という行為の面では同義。
業界や昔の名残によって呼び名が複数ある事は、これに限らず多々ある事だからのぅ。

ぱりとん君
余計混乱しちゃいますね。

博士
そーゆー時は語源を見れば分かりやすいんじゃ。
シーリング(Sealing)は元々「封印」を意味する。
シーリングスタンプ(シーリングワックス)と言って、蝋(ロウ)で手紙の封筒に封印を施す事もあるのぉ。

ぱりとん君
あのおしゃれなやつね。映画とかでしか見たこと無いケド・・・

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博士
簡単にまとめると、
1.目的は、気密状態や断熱の為に詰め物をして塞ぐ事。
2.詰め物(充填剤)の名称は、シーリング材(剤)、シーラント、シール材等とも言う。
3.建築の分野では、コーキング材(剤)とも言う。

ぱりとん君
だから商品名が「シリコーンシーラント○○」となっているんだね。

 

博士
余談じゃが、歯医者さんで使用する詰め物もシーラントと言いうんじゃ。

博士
工事名としては、コーキング工事、シーリング工事、シール工事・・・業界・職人さんによって言い方が異なるようじゃな。

ぱりとん君
シーリング、コーキングはだいたい同じって事ね。

博士
そうじゃな。少し歴史の話をすると、1950年前後に油性コーキング材がアメリカから輸入され、その材料で工事をすることを「コーキング工事」と呼ばれていたんじゃ。

博士
その後、優れたシーリング材が開発され、油性コーキング材に代わる素材として使われるようになった一方で、昔の名残や言い慣れた名前で「コーキング工事」と呼び続ける事もあるんじゃ。

 

どんな材質があるの?

ぱりとん君
充填剤の材質にはどんな種類あるの?

博士
主に①シリコーン系、②変成シリコーン系、③ウレタン系、④ポリサルファイド系の4つじゃな。

源さん
博士!そのシリコーンってなんだよ?シリコンを言い間違えたんか?

博士
これは「シリコーン」が正しいんじゃ。
よく「シリコンシーラント」と書き間違えられているが、正しくは「シリコーンシーラント」じゃ。

源さん
俺が良く買うホームセンターでも「シリコンシーラント」って書いてあるぜ?

博士
ここでは「別物」とだけ答えておこう。あとできっちり説明するから待っておれ。

ぱりとん君
源さんはいつも急に出てくるからびっくりするよなぁ~

博士
充填剤の種類はもちろん他にもあるんじゃが、今日はこの4つだけを見ていこう。

1.シリコーン

 

  • 最も一般的に売られてる
  • メリット:耐水性・耐熱性に優れコスパが良い。プライマー無しでも施工可。
  • デメリット:塗布した周辺が汚染される場合がある。基本的に上からの塗装ができない。
  • 使用用途:水周り、ガラス周りに最適。

 

2.変成シリコーン系
  • 名前は似ているが上記とは別物
  • メリット:使用用途が広く、悩んだらこれを使うのが無難と言われるくらいのいわゆる万能タイプ。
    周囲への汚染が少なく(非汚染性)、塗装が可能。
  • デメリット:値段が少しお高め。シリコーンに比べると密着性・耐久性若干低い。
  • 使用用途:万能タイプ。

 

3.ウレタン系
  • 硬化後はゴム弾性力を持つ為、補修材としても使われる
  • メリット:耐久性・気密性に優れる。塗装可能。
  • デメリット:紫外線に弱い。従って外部やガラス周りには不向き。ホコリを吸着してしまう。
  • 使用用途:外装のタイル目地、サッシ廻りなど

 

4.ポリサルファイド系
  • メリット:耐久性があり、表面に埃がつきにくい。
  • デメリット:柔軟性があまり無く、匂いが独特。
  • 使用用途:外装のタイル目地、サッシ廻り、カーテンウォールなど
博士
これらに加え、1つで固まる1成分型(1液性)と混ぜて固まる多成分性(2液性等)があるんじゃ。

 

「シリコン」≠「シリコーン」 似て非なる物

源さん
で?「シリコーン」ってなにさ?「シリコン」じゃないんか?

博士
シリコン(silicon)とシリコーン(silicone)は別物じゃ。

ぱりとん君
シリコンはよく聞くけど・・・。
野菜をレンジで蒸す事ができるゴムみたいな容器とか・・・

博士
アレはシリコーンじゃ。

源さん
まじか?

ぱりとん君
・・・え?じゃあ余計わかんないデス

博士
少し化学の話をするぞ。

ぱりとん君
お手柔らかに・・・

博士
シリコンもシリコーンも原料は同じケイ素(Si)じゃ。
ただこのケイ素と言うのは酸素と非常に結びつきやすく、自然界では単体では存在しないんじゃ。

ぱりとん君
いつも酸素と一緒にいるってこと?

博士
そうじゃ。それが二酸化ケイ素(SiO2)じゃ。
シリカとも言う事があるんじゃ。

ぱりとん君
乾燥剤でシリカゲルってのは聞いた事ありますね。

博士
そしてこの酸素と一緒になっているのを還元(酸化の逆=酸素を引っぺがす)することでシリコンになるんじゃ

ぱりとん君
「還元」って言葉は前にもやったよね?
『赤いガラスは金からつくる!』みたいな感じで

いい赤色を出すには「金」が必要!?
博士
これじゃな。

博士
このシリコンは工業用として半導体シリコン(半導体ウエハー)としてスマホや車などに使用されるんじゃ。

ぱりとん君
建築で使用するシール材とはまったく別物ですね。

博士
そしてシリコーンはケイ素(Si)を含む有機化合物の総称となる。耐熱性に優れ紫外線にも強い。
そして水をはじくのでシール材に使用されるわけじゃ。
他にも整形手術や先ほどの電子レンジで使える容器にも使うことができるんじゃ。

源さん
全くの別物だな。

博士
最後にもう一つ違いじゃ。
石英(クオーツ)とガラスの違いについてじゃ。

博士
石英は、二酸化ケイ素(SiO2)からなる結晶体。(分子が規則的に並んでいる)。
特に結晶性の高い物を「水晶」という。

ぱりとん君
つまり石英は水晶を含む言葉ってこと?

博士
そうじゃな。

博士
ガラスは、二酸化ケイ素(SiO2)からなる非結晶体(分子が不規則に並んでいる)の事じゃ。

ぱりとん君
前に「ガラスは液体?」でやったね。
博士
熱や圧力、条件によって名称が変わるのでちゃんと覚えて無いと混乱の元じゃぞ!